Vercel AI SDKの料金設計:既存サブスクリプションでエージェント費用を抑える
Vercel AI SDKがClaude CodeやCodexなどの既存サブスクリプションを使う仕組みを解説。認証情報の優先順位、プラン利用枠とAPI・AI Gatewayの請求先、Vercel Sandboxに残る実行コストまで、どの経路が誰に向くかを実例と設定手順で整理します。

Vercelは2026年9月14日、組み込み型コーディングエージェントの費用を負担できるアカウントの範囲を変更しました。Vercel AI SDKは、ホストですでにサインイン済みの対応エージェントサブスクリプションを利用できるようになりました。プランの利用枠を使い切るまでは、条件を満たす次のモデル実行に追加料金がかからず、増分コストは$0です。ただし、Sandboxのコンピューティング料金は別に発生します。
Vercel AI SDKで変わるのは支払元であり、エージェントではありません
AI SDKには、完全なコーディングエージェントを共通のHarnessAgentインターフェースで動かすためのレイヤーがあります。Vercelが各アダプターをハーネスと呼ぶのは、単なるモデル呼び出し以上のものを包み込むからです。エージェント固有のツール、ワークスペースでの動作、セッション状態、権限、コンパクションまで含まれます。
ここは切り分けて考える必要があります。今回のリリースで、Claude Code、Codex、Cursorなどのコーディング性能が上がるわけではありません。変わるのは、アダプターが認証情報を探す場所です。アプリケーションを実行するマシンに保存された、ネイティブのサブスクリプションセッションも利用候補になります。
従来、組み込み実行にはプロバイダーの認証情報かAI Gatewayの認証情報を明示する必要がありました。今後、対象アダプターはホストで認証済みのサブスクリプションへフォールバックできます。検出のためにアプリケーションコードを変更したり、新しい設定を加えたりする必要はありません。
リリース情報に挙げられているアダプターは9つです。Claude Code、Cline、Codex、Cursor、fx、GitHub Copilot、Grok Build、OpenCode、Piが対象です。ただし、すべてのアカウントで一律に使えるという意味ではありません。各エージェントがサブスクリプションログインに対応している必要があり、そのログインで何を利用できるかは各プランの規約に従います。
ビジネス上の変化は明快です。同じagent.generate()の呼び出しでも、周囲にある認証情報によって、費用が3つの異なる予算枠のいずれかに計上されます。
どこに請求されるかは認証情報の優先順位で決まります
認証モードは3つあり、デフォルトはautoです。Claude CodeやCodexのような直接接続型アダプターでは、実質的に次の順序で判定されます。
見落としやすい環境変数が、会計上の扱いを変えるポイントです。directモードのClaude Codeは、Claudeのサブスクリプションより先にANTHROPIC_API_KEYまたはANTHROPIC_AUTH_TOKENを使います。Codexも、ChatGPTの利用権よりOPENAI_API_KEYまたはCODEX_API_KEYを優先します。
autoでは、そのさらに上にもう1段階あります。Gatewayの認証情報が見つかれば、プロバイダーキーやサブスクリプションよりAI Gatewayが優先されます。
アダプターによっては、通信経路と請求元が一致しません。fxはdirectとai-gatewayのどちらでもモデルリクエストをAI Gateway経由で送信します。それでも、該当する環境認証情報が設定されておらず、かつai-gatewayを選んでいない場合は、対応するネイティブサブスクリプションを解決できるようになりました。この表をすべての通信経路に当てはめる前に、各アダプターのページを確認してください。

このセキュリティ境界は、生のOAuthトークンを隔離環境へコピーする方法より堅牢です。Vercelはホスト側で認証情報を解決し、OAuthの更新もそこで行います。Sandboxがリクエスト変換に対応している場合、エージェントに見えるのはプレースホルダーだけで、実際の認証情報は一致する外向きリクエストに限ってホストが挿入します。
これにより、秘密情報をSandboxから切り離せます。ただし、個人向けサブスクリプションが会社全体で共有できる処理能力に変わるわけではありません。
AI SDKの課金はどう計算すればよいか
モデル料金は利用枠へ移せますが、実行環境の料金まで一緒に移るわけではありません。
サブスクリプションの利用枠
現時点で最も分かりやすい例はClaude Codeです。Claude Proは月払いで$20、年払いで$200です。Claude Maxは、Proの5xまたは20xの利用量に対して月額$100または$200です。すでにいずれかのプランを契約している場合、ネイティブ認証の対象となる実行は、共有の利用枠を使い切るまでモデル料金が別途加算されません。
重要なのは「共有」という点です。Anthropicの現在の説明では、Claude Agent SDK、claude -p、サードパーティー製のAgent SDKアプリも引き続きサブスクリプション上限を消費します。また、claude.ai、Claude Code、Claude Desktopは同じ利用上限に算入されます。VercelのClaude CodeアダプターはAnthropicのAgent SDKを使用するため、実務上は、組み込み処理も契約者のほかのClaude利用と同じ枠を取り合うと考えるべきです。
OpenAIも予算の構造は同じですが、計測単位は異なります。ChatGPT Plusは月額$20で、CodexはChatGPTの各プランに含まれ、上限はプランごとに異なります。Codexのエージェント利用枠は、提供地域ではChatGPT Work、ChatGPT for Excel、Workspace Agentsと共有されます。対象となるPlusおよびProユーザーは、付属分を使い切った後にクレジットを購入できますが、これはAPIクレジットではありません。
つまり、サブスクリプション経路は無料推論ではなく、上限が変動する前払い済みの処理枠です。バックグラウンドジョブをアダプターへ移せば、今日のAPI料金を抑えられる一方で、明日の対話セッションで使える時間が短くなる可能性があります。
プロバイダーAPIへの直接接続
プロバイダーキーが優先されると、そのプロバイダーの従量課金アカウントに請求されます。Claude Sonnet 4.6の標準API料金は現在、入力100万トークンあたり$3、出力100万トークンあたり$15です。OpenAIのGPT-5.6 Lunaは、入力100万トークンあたり$0.20、キャッシュ済み入力100万トークンあたり$0.02、出力100万トークンあたり$1.20です。
API経由なら費用の帰属は追いやすくなりますが、コーディングエージェントのタスク費用まで簡単に予測できるわけではありません。リポジトリの規模、会話履歴、推論の強度、再試行、ツールの反復回数によって、トークン使用量は変わります。プロンプト数ではなく、完了したタスク単位で測定してください。
AI Gateway
Gatewayの認証情報が優先されると、使用量はAI Gatewayに計上されます。Vercelの料金は上流プロバイダーの定価と同じで、トークンへの上乗せやプラットフォーム手数料はありません。通常は前払いのGatewayクレジットから支払い、Enterprise顧客はVercelの請求書にまとめることもできます。
チームにとっては、支出の窓口を1つに集約できる経路です。さらに、Gatewayの予算上限も使えます。ただし、ネイティブサブスクリプションを使ってGatewayを迂回した実行には、この制御が適用されません。追加コストの削減と一元的な予算管理のどちらを優先するか、意図を持って選ぶ必要があります。
Sandboxのコンピューティング料金
AI SDKの各エージェントランタイムは、引き続きSandbox内で動作します。Vercelのデフォルトリージョンiad1では、Sandboxの料金はActive CPU 1時間あたり$0.128、プロビジョニング済みメモリ1 GBを1時間使うごとに$0.0212です。モデルやネットワークのI/O待ちではCPU課金が止まりますが、メモリは実行時間全体にわたって課金されます。
Vercelが公開しているAIコード検証の例は、2 vCPUと4 GBのメモリを使って5分間実行されます。CPU使用率が100%の場合、費用は約$0.03です。仮に$20のProクレジットを全額この同一条件の処理だけに使えるなら、単純計算ではSandboxの有料利用に入るまで約666回実行できます。実際の回数は異なります。ほかのVercelサービスもクレジットを消費する可能性があり、タスクごとに必要なリソースが違い、転送量やストレージの料金が加わる場合もあるためです。
予算の全体像は次のとおりです。
- サブスクリプション経路: 既存プランの料金、共有の利用枠、Sandbox料金。
- プロバイダー経路: プロバイダーの従量制トークン料金、Sandbox料金。
- Gateway経路: Gateway残高または請求書に計上されるプロバイダー定価のトークン料金、Sandbox料金。
利用形態ごとに選ぶべき経路
社内向けリポジトリ支援ツールを動かす個人創業者
すでにClaude ProまたはChatGPT Plusを契約している創業者なら、利用頻度の低いテスト修正ツールやリポジトリ要約ツールをHarnessAgentで動かし、directを選んで、対象となるモデル処理をネイティブプランでまかなえます。試験導入の段階で別のモデル残高を用意せずに済むのが利点です。
用途は社内に限定し、プロバイダーの使用状況ページを確認してください。同じサブスクリプションが、創業者本人のターミナルやアプリでの作業にも使われます。バックグラウンドジョブのために、その日の後半に必要な利用枠を失うこともあります。
オペレーター業務を標準化する制作会社の技術責任者
制作会社では、担当者ごとに範囲を限定したリポジトリタスクを割り当て、その担当者がホスト上で持つ対象サブスクリプションを利用できます。重要なのはアダプターの選択ではありません。実行前に、プロバイダーAPIの環境変数が存在しないことを確認する点です。
これにより、経理にも明快なルールを示せます。範囲を限定した社内作業にはまずプランの利用枠を使い、意図的にキーをマウントした場合だけプロバイダーAPIを利用するという運用です。1人のログイン情報を制作会社全体で共有することも避けられます。
共有オートメーションを運用する開発者プラットフォームチーム
プラットフォームチームが無人ジョブや共有ジョブを運用するなら、通常はai-gatewayに固定するのが適切です。サブスクリプションによる増分コスト$0の時間帯は手放すことになりますが、請求責任者、クレジットプールまたは請求書、支出制御を1か所にまとめ、個人ではなくサービス単位で管理できます。
以前のfxアダプター解説で示した重要な点は今も変わりません。fxのどちらのモードでも、モデルリクエストはAI Gatewayを経由します。9月14日に変わったのは、認証情報のフォールバックです。より優先度の高い認証情報がない場合、対応するネイティブサブスクリプションも使えることを、セットアップと費用の考え方に加える必要があります。
顧客向けにエージェント処理を販売するSaaS創業者
顧客向けのコーディング機能で、従業員1人のサブスクリプションを処理能力の基盤にするべきではありません。顧客トラフィックは共有され、変動し、担当者が変わっても動き続けることが求められます。明確な管理責任者がいるAI GatewayまたはプロバイダーAPIアカウントを使い、Sandboxもユニットエコノミクスに含めてください。
既存サブスクリプション対応エージェントの比較記事では、すでに契約しているプランを使う場合に、1人の開発者がどのローカルまたはオープンソースクライアントを選ぶべきかを扱っています。今回のリリースの焦点は、対応ランタイムをAI SDKアプリケーションへ組み込むことです。ログイン方法は似ていても、運用モデルは別物です。
Claude Codeのジョブをプラン利用枠で1回実行する
この手順は、指定されたユーザーがClaude Codeへサインイン済みのホストで、範囲を限定した社内ジョブを動かすためのものです。Claude Codeアダプターで文書化されている設定を使って意図的にdirectを選ぶため、Vercel OIDCトークンでSandboxを認証しながら、モデル処理をGatewayへ送らずに済みます。
文書に記載されたパッケージをインストールする
既存のNodeプロジェクトに、エージェントのコアパッケージ、Claude Codeアダプター、Vercel Sandboxアダプターを追加します。
Bashpnpm add @ai-sdk/harness @ai-sdk/harness-claude-code @ai-sdk/sandbox-vercelホストでサインインする
同じホスト上でClaude Codeを起動し、対象サブスクリプションが紐づくClaudeアカウントを選びます。
BashclaudeSandbox用の
VERCEL_OIDC_TOKENは残しておきます。プロセスの環境変数を確認し、サブスクリプションから支払いたい実行ではANTHROPIC_API_KEYとANTHROPIC_AUTH_TOKENを削除してください。どちらか一方でも存在すると、ネイティブログインよりプロバイダー変数が優先されます。direct経路に固定する
次の内容を
agent.mjsとして保存します。このコードでは、文書化されているdirectセレクター、現在のnode24Sandboxランタイム、ブリッジに必要な公開ポート4000を使います。JavaScriptimport { HarnessAgent } from '@ai-sdk/harness/agent'; import { createClaudeCode } from '@ai-sdk/harness-claude-code'; import { createVercelSandbox } from '@ai-sdk/sandbox-vercel'; const agent = new HarnessAgent({ harness: createClaudeCode({ auth: 'direct' }), model: 'claude-sonnet-4-6', sandbox: createVercelSandbox({ runtime: 'node24', ports: [4000], }), }); const session = await agent.createSession(); let exitCode = 0; try { const result = await agent.generate({ session, prompt: 'Create a short TODO.md for this repository.', }); console.log(result.text); } catch (err) { exitCode = 1; console.error(err); } finally { await session.destroy(); process.exit(exitCode); }2つの利用明細を確認する
影響のないタスクを1回実行します。プロバイダーの使用状況ページでプランの利用枠が減り、API料金が新たに発生していないことを確認します。続いて、Vercel UsageでSandboxの明細を確認してください。
モデルリクエストがAI Gatewayに記録されていれば、Gatewayの認証情報が優先されています。プロバイダーのAPIダッシュボードに料金が記録されていれば、プロバイダー認証情報が優先されています。試験運用を拡大する前に停止し、環境を修正してください。
運用前に把握すべき制約
ネイティブログインはホストに紐づきます。アプリケーションの顧客全員にそのまま提供できるOAuthフローではなく、個人の利用枠をチーム全体でまとめる仕組みでもありません。
プランの処理可能量も一定ではありません。OpenAIによると、Codexの上限はプランとタスクによって変わります。Anthropicによると、Claudeの使用量はモデル、タスクの複雑さ、コンテキスト、エフォートに左右されます。どちらも、このVercel経路で実行できる本番ジョブ数を固定値では示していません。
AI SDKのエージェントパッケージは引き続きexperimentalであり、リリース間で破壊的変更が起こる可能性があります。測定可能な社内パイロットであれば許容できても、依存関係のバージョンを固定し、認証情報の選択をテストし、顧客への提供を約束する前にGatewayまたはプロバイダー経路を用意しておくべき理由になります。
次の月曜日に実行すること
社内リポジトリのタスクを1つ、対象ユーザーを1人選びます。アダプターをdirectに設定し、そのホストのプロバイダー変数を洗い出して、タスクを1回だけ実行してください。どの請求ダッシュボードに動きがあったか、サブスクリプションの利用枠が変化したか、Sandbox料金はいくらだったか、タスクが完了したかを記録します。
対応プランをすでに契約し、範囲を限定した社内ワークフローがあるなら、今週中に試す価値があります。エージェント自体がサブスクリプションログインに対応していない場合や、パッケージがexperimentalであることを依存関係ポリシー上受け入れられない場合は待つべきです。モデル料金のわずかな削減より、中央集約した予算と共有の本番運用責任を重視するなら、ai-gatewayを維持してください。通常のAI SDKモデルプロバイダーだけを呼び出し、HarnessAgentを使っていない場合は影響を受けません。
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- 最終更新
- 2026年9月15日
- カテゴリー
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