Vercelのコード サンドボックスが64 GBに──大規模ジョブはどう変わる?

Vercel Sandboxの作業ストレージが32 GBから64 GBへ拡大しました。リポジトリ、ビルド、AIエージェント、データ処理のどのジョブがコード サンドボックス内に収まるのかを解説します。移行前に測るべきピーク容量、永続化と料金の違い、実運用での検証手順と判断ポイントまで整理します。

Saturday, September 12, 2026Omid Saffari
Tools
Vercelのコード サンドボックスが64 GBに──大規模ジョブはどう変わる?

今回の価値は、「64 GB」という数字だけにあるわけではありません。これまでVercel Sandboxの32 GB上限にぶつかっていたリポジトリジョブを、削減・分割したり別の環境へ移したりせず、ひとつのコード サンドボックス内で完了できる可能性が高まったことです。

2026年9月11日、VercelはすべてのSandboxで標準の作業ストレージを32 GBから64 GBへ倍増しました。

コード サンドボックスの作業領域が倍増

Vercel Sandboxは、独自のカーネル、ファイルシステム、ネットワークを備えた小型仮想マシンであり、隔離されたLinux microVMです。リポジトリを渡し、エージェントにコードを編集させ、パッケージをインストールし、テストとビルドを実行して、最後に成果物を取り出せます。

これらの工程は、すべて同じローカルディスクを使います。依存関係ツリーを展開した時点でも、チェックアウト済みのリポジトリは残っています。ビルドキャッシュやコンパイル済みの出力が、一時ファイルと同時に存在することもあります。完成した成果物が小さくても、生成途中では一時的にそれを大きく上回る容量が必要になり得ます。

今回変わったのは、このピーク時の上限です。VercelはSandboxの作業ストレージを32 GBから64 GBへ拡張しました。従来より32 GB増え、容量は倍になります。対象は、Vercel Managed Image、カスタムイメージ、非推奨のruntimeプロパティから作成したSandboxです。

これはSandbox内部の作業容量であり、データベースやオブジェクトストレージの新たな割り当てではありません。Vercelはこれを一時的なNVMeストレージと説明しています。ジョブ終了後もファイルを残す必要があるなら、永続化は引き続き別に判断しなければなりません。

判断基準は、ジョブ全体がひとつの環境に収まるか

本当に問うべきなのは「Vercelのディスク上限はいくつか」ではなく、「このジョブ全体を、特別な削減や受け渡しなしでひとつのSandbox内に収められるか」です。

作業領域は、次の式で見積もれます。

作業領域のピーク = リポジトリとチェックアウト + インストール済み依存関係 + ビルド成果物 + 一時データの最大量

ジョブの実行中に最大使用量を測ってください。最終的なzipファイルの大きさから推測してはいけません。パッケージの展開、コンパイル、テストフィクスチャ、ブラウザバイナリ、キャッシュ、ディスクへ退避したデータが重なるのは数分だけかもしれませんが、その数分で処理を完了できるかが決まります。

リポジトリ、依存関係、ビルド出力、一時データがひとつの64 GB Vercel Sandbox作業領域を共有する構造模型
最終成果物ではなく、作業領域のピークを見積もる

Vercelの現在の料金とクォータでは、ストレージ層ごとに予算項目が分かれています。

レイヤー用途セッション終了後料金への影響
Sandboxの作業ディスクチェックアウト、インストール、ビルド、テスト、一時データ非永続Sandboxでは破棄ローカルディスク単独の従量料金は記載されていない。ただし、コンピュート、メモリ、作成回数、転送には料金がかかる
永続SandboxスナップショットSandboxのファイルシステム全体を後で復元永続化が標準のため、停止時に自動保存スナップショットストレージは$0.08/GB/月
Drive出力、キャッシュ、複数の実行で共有するデータの永続ディレクトリひとつのSandboxとは独立して保持iad1では、ストレージが$0.05/GB/月、読み取りが$0.0015/GB、書き込みが$0.004/GB

この違いを押さえると、コスト計算も変わります。作業ディスクが倍になっても、コンピュート単価まで倍になるわけではありません。Vercelが現在示しているiad1の例では、4 vCPUsと8 GBのメモリを使い、CPUをフル稼働させる30分間のビルド・テスト実行は約$0.34です。

ジョブが長時間動いたり、より多くのCPUやメモリを必要としたりすれば、大規模なジョブのコストは上がり得ます。パッケージ、リポジトリ、成果物、データセットなどのダウンロードは無料ですが、Sandbox外へ送信するデータには料金がかかります。

追加ファイルが新たなストレージ料金につながるのは、永続化する場合です。新たに使えるようになった32 GBをすべて使用し、そのまま丸ひと月保持したなら、料金表に基づく計算は、スナップショットひとつにつき32 × $0.08 = $2.56となります。これは試算であり、自動的に発生する料金ではありません。結果を外へ書き出して作業領域を破棄する非永続の実行なら、このスナップショット料金を避けられます。

容量拡大の恩恵を受けるケース

大規模モノレポを扱うスタッフエンジニア

リポジトリ、依存関係グラフ、ビルド出力を以前の上限内に同居させられず、パッケージを間引く、テストフィクスチャを削除する、ビルドを分割するといった対応を続けているスタッフエンジニアもいるでしょう。

実測したピークが64 GBのファイルシステムに収まるなら、チェックアウト、インストール、テスト、ビルドをひとつのジョブへ戻せます。運用上の利点は、受け渡しと部分的な成果物が減り、ビルド失敗時の再試行ポイントを一本化できることです。

だからといって、Vercelが自動的に最適なSandboxプロバイダーになるわけではありません。実行基盤を選定中なら、より広い視点で隔離と課金のトレードオフを扱うAIエージェント向けコードサンドボックス比較が参考になります。今回の変更で動くのは、Vercelのディスク境界だけです。

リポジトリ修復を動かすエージェント基盤エンジニア

コーディングエージェントは、作業を進めるほどストレージを消費しがちです。リポジトリをクローンし、ツールをインストールし、ファイルを変更し、テストスイートを実行して、結果をパッケージ化します。複数の手法を試すエージェントなら、キャッシュや中間出力も残ることがあります。

追加された32 GBにより、この一連の処理をひとつのSandbox内で完了できる余地が広がります。ディスク不足による再試行や、独自のクリーンアップツールをエージェントのワークフローから外せるかもしれません。ただし効果があるのは、失敗原因が本当にディスクだった場合です。メモリ、CPU、ネットワークポリシー、セッション時間がボトルネックなら、ファイルシステムを拡張しても改善しません。

変換処理の途中でディスクへ退避するデータエンジニア

データエンジニアは、ダウンロードしたデータの並べ替え、結合、展開を行う際に、ローカルファイルシステムを一時領域として使えます。ディスクが広がれば、早い段階で処理を分割したりリモートストレージをマウントしたりせず、一時データをローカルに保てる可能性があります。

それでも、出力をどう持ち出すかは決めておく必要があります。残すべき結果は外部へコピーするか、適切なオブジェクトストアへ書き込むか、後の実行でも同じディレクトリが必要ならDriveをマウントします。64 GBの一時ディスクが役立つのは、処理後に破棄できるからです。これを永続ストレージとして扱うと、役割も料金も異なるものを混同してしまいます。

runtimeをまだ使っているチーム

9月11日のリリースでは、非推奨のruntimeプロパティで設定されたSandboxも明確に対象に含まれています。既存コードでも、イメージを移行せずにディスク容量が増えるはずです。

それでも、現在のプラットフォームが向かっているのはイメージです。Sandbox SDKのバージョン3以降、runtimeimageも指定しないSandboxではvercel/sandbox/universal:latestが使われます。Managedイメージは毎晩更新され、再現可能なビルドが重要ならダイジェストを固定することで不変の環境を使えます。

ワークフローを変える前に、代表的なジョブを測る

今回のリリースで上限は緩和されましたが、自社のイメージとジョブが実際に使える容量までは分かりません。クリーンアップ処理を削除したり、分割ビルドを再び統合したりする前に、実際のジョブをひとつ測定してください。

  1. 判断材料になるジョブを選ぶ

    最近ディスク不足になったジョブ、または以前の上限を超えないためだけに分割しているジョブをひとつ選びます。本番と同じリポジトリ、ロックファイル、ビルドコマンド、入力データを使ってください。小さなサンプルリポジトリでは、事業上の判断材料になりません。

  2. イメージベースの新しいSandboxを起動する

    現在のCLIとイメージを使う方法なら、結果を再現しやすくなります。次の手順は、Vercelが文書化しているSandbox CLIの流れに沿い、永続化を無効にしています。そのため、測定でスナップショットが自動作成されることはありません。

    Bash
    npm i -g sandbox
    sandbox login
    sandbox create --name workspace-check --image vercel/sandbox/node:24 --timeout 30m --non-persistent
    
    tar -czf app.tgz -C ./my-app .
    sandbox copy ./app.tgz workspace-check:/tmp/app.tgz
    sandbox exec workspace-check -- sh -c "mkdir -p /app && tar -xzf /tmp/app.tgz -C /app"
  3. ストレージ使用量を工程ごとに記録する

    チェックアウト後、依存関係のインストール後、可能ならビルドで最も容量を使う最中、そして成果物の完成後にディスクを確認します。.nextdistは、実際のプロジェクトが出力するパスに置き換えてください。

    Bash
    sandbox exec --workdir /app workspace-check -- sh -lc 'df -h /; du -sh .git node_modules .next dist /tmp 2>/dev/null || true'
    
    sandbox exec --workdir /app workspace-check -- npm install
    sandbox exec --workdir /app workspace-check -- sh -lc 'df -h /; du -sh .git node_modules .next dist /tmp 2>/dev/null || true'
    
    sandbox exec --workdir /app workspace-check -- npm run build
    sandbox exec --workdir /app workspace-check -- sh -lc 'df -h /; du -sh .git node_modules .next dist /tmp 2>/dev/null || true'

    df -h /を見れば、Sandboxにどれだけ空きが残っているか分かります。duの各行からは、作業領域のどの部分が容量を使っているかを確認できます。完成後だけを見ても、ピークを取り逃す可能性があります。

  4. 従来の回避策を外して一度だけ再試行する

    実測した最大使用量が表示された空き容量に収まるなら、依存関係の削減や分割ビルドの受け渡しを外し、同じジョブをもう一度実行します。成功したかどうか、経過時間、Active CPU、割り当てメモリ、転送量、スナップショットやDriveストレージが作成されたかを記録し、その後Sandboxを停止します。

    Bash
    sandbox stop workspace-check

容量が増えても変わらない限界

ディスクが増えても、メモリ、CPU、時間は増えません。Sandboxセッションの標準時間は引き続き5分です。Hobbyのセッションは最大45分、ProとEnterpriseは最大24時間まで実行できます。

また、64 GB未満のあらゆるワークロードが問題なく収まると保証されたわけでもありません。起動時のイメージがファイルシステムの一部を使い、Vercelが毎晩更新するローリングイメージタグによって使用量が変わる可能性もあります。起動後に実際の空き容量を確認してください。同じビルドを毎回同じ環境から始める必要があるなら、イメージのダイジェストを固定します。

耐久性のある共有データが必要なら、Driveなどの永続ストアを使います。Sandboxが示す作業容量を超えるなら、分割を維持する、大規模な一時データをマウント済みストレージへ移す、別の環境で実行する、という選択肢があります。新しい上限が変えるのは判断の境界であり、選択肢そのものではありません。

月曜日に実行すること

実際のリポジトリ、エージェント、データ処理が以前のディスク上限で失敗した、あるいはその上限を避ける目的だけでクリーンアップ処理を抱えているなら、今週中に動く価値があります。ピークを測っていないなら、まず待つべきです。推測で機能している分割を外しても、次の失敗を先送りするだけです。すでに以前の容量を十分下回っているジョブや、本当のボトルネックがCPU、メモリ、ネットワークアクセス、セッション時間、永続ストレージにあるジョブには影響しません。

月曜日には、代表的なジョブをひとつ選び、新しい64 GBのイメージベースSandboxで上記の測定を行い、従来のストレージ回避策を外して一度だけ再実行してください。実測したジョブが完了し、コンピュートと永続化を合わせた料金にも納得できる場合に限って、より単純な単一ジョブ構成を残します。

運用判断を変えるアップデートを平易に読み解く記事は、ニュースレターでお届けしています。

最終更新
2026年9月12日
カテゴリー
Explained

Googleでこのサイトを優先する

omidsaffari.comをGoogle検索の優先ソースに追加

omidsaffari.comを優先ソースに設定すると、GoogleがTop Stories・AI Overviews・AI Modeであなたのために優先表示します。

Cloudflare Workflowsの保存期間が7日に短縮:実行履歴とコストの設計法

Cloudflare Workflowsの保存期間が7日に短縮:実行履歴とコストの設計法

Cloudflare Workflowsでは、新規のWorkers Paid Workflowの完了・エラー状態の既定保存期間が30日から7日に短縮されました。成功履歴とエラー履歴を分け、障害調査に必要な期間を守りながらストレージ料金を見積もる方法を、設定例と具体的なコストモデルで解説します。2026年9月11日Explained
AIレポート作成を週次業務に組み込む:ChatGPT Data実践ガイド

AIレポート作成を週次業務に組み込む:ChatGPT Data実践ガイド

ChatGPT Dataを使い、承認済みの業務データから週次レポートやダッシュボードを作る方法を解説します。指標定義、データ権限、公開範囲、人による承認、Work・Codex・DWH・BIを含む実コストを整理。AIレポート作成を安全に試し、毎週の引き継ぎを減らすための手順と、導入前に確認すべき限界をまとめました。2026年9月11日Explained
Cursor 使い方ガイド:Projectsでチーム開発をレビューキューへ

Cursor 使い方ガイド:Projectsでチーム開発をレビューキューへ

Cursor Projectsは、共有コンテキストとコーディネーター、定期トリガーでAIコーディングの仕事単位をどう変えるのか。チーム導入前に押さえたいCursor 使い方の要点、レビュー負荷、料金、検証手順を、20件に限定したパイロットとモデル利用料・人件費の試算を交えて実務目線で解説します。2026年9月11日Explained
Codex 料金ガイド:ChatGPT Deep ResearchとWorkの共有予算

Codex 料金ガイド:ChatGPT Deep ResearchとWorkの共有予算

ChatGPT WorkのDeep Researchは、Codexと同じ利用枠またはクレジットを消費します。Codex 料金の計算方法、通常のChatとの違い、共有予算を守る運用手順を整理。具体的なクレジット試算から、成果物と引用を人が確認するポイントまで分かりやすく解説します。2026年9月10日Explained
Vercel 料金改定:非公開の本番サイトはいくらかかる?

Vercel 料金改定:非公開の本番サイトはいくらかかる?

Vercel 料金改定を解説。追加$0のVercel Authenticationと、Proで1プロジェクト月額$20のPassword Protectionを比較します。1、5、8件の試算から、社内ツール、顧客確認用サイト、既存の月額$150プランで選ぶべき方式と設定時の注意点を整理します。2026年9月10日Explained
ChatGPT 音声会話の制限で見直す、1日分の業務コスト

ChatGPT 音声会話の制限で見直す、1日分の業務コスト

ChatGPT 音声会話の制限が変わり、GoとPlusはローリング24時間で3時間、Pro $100は15時間、Pro $200は無制限になりました。プラン別のモデル、上限到達後の挙動、Desktop Voiceとの違いを整理し、音声中心の仕事を止めないプラン選びと利用記録の付け方を解説します。2026年9月9日Explained
Vercel 料金はどこまで定額に?Flat Rate CDNの仕組みを解説

Vercel 料金はどこまで定額に?Flat Rate CDNの仕組みを解説

Vercel ProのFlat Rate CDNで、CDN料金はどこまで固定できるのか。4段階の容量、スパイク保護、オンデマンドとの違い、対象外コストを整理。SaaSや制作会社がBillingで選ぶべきティアを具体例から解説し、月額$20から始まる容量料金と、請求総額が定額にならない理由までわかりやすく紹介します。2026年9月9日Explained
Vercel 料金を抑えるBasicビルドマシンの見極め方

Vercel 料金を抑えるBasicビルドマシンの見極め方

Vercel ProとEnterpriseで選べるBasicは、2 vCPUs・8 GBでビルド時間(分)あたり$0.007。ElasticとのVercel 料金を、実行時間、分単位の切り上げ、失敗、キュー待ちまで含めて比較し、小規模プロジェクトで本当にコストを下げられるかを見極める方法と切り替え手順を解説します。2026年9月9日Explained
ニュースレター

毎週日曜、一通の手紙。動くシステムの話。感想戦ではなく。

週刊。スパムなし。いつでも解除できます。