Krea 2のスタイル転送を実案件で検証:40カット制作のコストと実力
Krea 2のスタイル転送で、ブランド統一が必要な40カットのキャンペーンを実制作。4枚のムードボード、スタイル強度、生成時間、compute unitの費用を検証し、Midjourneyとの違いや、人の手が欠かせなかった工程まで、現場の数字と判断基準をもとに実務目線で詳しく解説します。

Krea 2のスタイル再現性は、GPT Image 2との差がわずか0.14ポイントでした。しかも、必要なのはOpenAIの料金ではなくKreaのcompute unitです。「スタイルを忠実に再現できる」という評価は、実際のブランド制作でも通用するのでしょうか。リリース当日、クライアント案件の40カットをスタイル転送システムで作り直して検証しました。

Krea 2で40カットのブランド世界は統一できたか
完成したのは、ヒーロー、商品、ライフスタイル、エディトリアル向けの展開を含む40カットです。全編を通じて、寒色系のほぼモノクロなベース、1点のエレクトリックシアン、暖色への偏りなし、過度に艶めいた「AIらしい高級感」なし、というカラーストーリーを維持できました。クライアントから、どれが生成画像でどれが撮影画像なのかを聞かれることもなく承認されました。ブランド案件で本当に意味があるのは、この基準だけです。
試す決め手になったのは、Contra Labsによる4モデルのスタイル転送ベンチマークです。Krea 2 LargeはStyle Fidelityで#2となり、GPT Image 2との差は0.14ポイント。そこから他モデルまでの差は、その4倍を超えます。また、net-usefulの3.0という基準を上回った非GPTモデルはKrea 2 Largeだけでした。
ただし、同じベンチマークには見えにくい注意点もあります。Krea 2 Largeの出力のうち、スタイル評価が下位2段階に入った割合は26%で、GPTの20%を上回りました。セット全体の統一感は保てたものの、デザイナーの手が必要だった点は3つあります。後ほど詳しく触れます。
制作要件――クライアントが本当に必要としていたもの
難しかったのは、個別にきれいな画像を40枚つくるのではなく、40カットすべてを同じブランドの表現に見せることです。ここは、プロンプトだけに頼るAI画像生成ツールが必ずつまずくポイントです。見栄えのよい画像はできます。しかし横に並べるとまとまりがなく、ブランドではなくPinterestのボードに見えてしまいます。
クライアントワークとして、次の入力条件を最初に固定しました。
- 生成前に確定したカラーストーリー:寒色系のほぼモノクロな被写体、単一のアクセント、暖色なし、明度域を制御
- 文字のサイズ設計はモデルに一切任せず、完成画像に合わせてFigmaで設定。AIには生成させない
- クライアント承認済みのアートディレクション。そのうち3カットをムードボードの軸として使用
これは、プロンプトだけの制作フローが崩れやすい条件です。そうしたモデルが返しがちなのは「洗練されていて無難」な絵であり、ブランド固有の表現とは正反対です。生成を重ねるうちにシステムの表現がずれていく問題は、実装側から取り組んだFigma Makeのカスタムスキル制作でも同じでした。制御された入力がなければ、数回生成するたびにモデル固有の平均的な美意識へ戻ってしまいます。
Krea 2が掲げるのは、スタイルをプロンプト内の単語ではなく、制御可能な入力として扱うという考え方です。今回確かめたかったのは、まさにそこでした。
Krea 2のスタイル転送設定――ムードボード、参照画像、強度
Krea 2は、Kreaがゼロから開発した初の基盤モデルです。なかでも試す価値があるのがスタイル転送システムです。画像を渡すと、パレット、ライティング、粒状感、構図のリズムといったスタイル要素を抽出し、プロンプトで指定した別の被写体へ適用します。同時に組み合わせられる参照画像は最大4枚。それぞれの影響度は強度コントロールで調整できます。
最終的に採用した設定は次のとおりです。
- 上限の4枚で構成したムードボード:承認済みの参照画像3枚に、既存のブランドライブラリから選んだトーンの基準画像1枚を追加
- スタイル強度は中高域:モデルが未経験の被写体でもカラーストーリーを固定でき、かつ被写体の構造を崩さない強さに設定
- バッチのvariationは、広がりよりも一貫性を優先する側へ調整。多くの制作者が判断を誤るのは、このレバーです
反復回数の計算を左右するため、プラン構成も重要です。Krea 2を使えるのはProからで、月額$35、20,000 compute unitsが含まれます。Maxは月額$70で60,000 compute unitsです。
生成は15秒未満で終わり、制作の回し方そのものが変わりました。時間コストがここまで低いと、プロンプトを最初から固め切るのではなく、ムードボードと対話するように生成できます。まず6カットを試し、ずれを読み、強度を微調整して再生成する。判断を外しても失うのは15秒とわずかなcompute unitsであり、コーヒー休憩ほどの時間ではありません。

実制作のワークフロー――採用カットができるまで
ムードボードを固定した後、実際のブランドセットでは次の手順を繰り返しました。
- 新しい被写体カテゴリーで6カットのテストバッチを生成する
- 「きれいな画像か」ではなく、カラーストーリーからのずれを確認する
- 2カット以上がずれたらスタイル強度を1段階上げ、被写体が平板になったら下げる
- 被写体カテゴリーごとに設定を固定し、本番バッチを生成する
- 明らかな失敗は再生成する。プロンプトで無理に従わせようとしない
スタイル転送システムの価値がはっきりしたのは、プロンプトで扱ったことのない被写体にも、同じカラーストーリーを維持できた点です。ムードボードに人物はありませんでしたが、キャンペーンには人物が必要でした。それでも、パレットを文章で説明せずに、寒色系のほぼモノクロな色調、明度域、シアンのアクセントを人物へ引き継げました。これはプロンプトだけの制作フローでは難しいことです。Midjourneyのプロンプトへ毎回「エレクトリックシアンをアクセントにした寒色系のほぼモノクロ」と書いても、プロンプトとモデルの事前学習傾向が競合するため、6カットも生成すればずれが生じます。
バッチのvariationは、独立した調整項目として意識する必要があります。一貫性を優先する設定では、バッチ全体のパレットとディテールが締まりました。ライフスタイルカテゴリーで、同じ強度設定のまま構図の幅を広げようとvariationを大きくしたときだけ、ブランドから外れたカットが少数生じ、再生成に回しました。解決策は、プロンプトを改善することではありません。variationを戻して、2つ目のバッチを生成することでした。
タイポグラフィは一度もモデルを通していません。文字はすべて、完成画像に合わせてFigma上で組みました。AIによる文字生成は今も不安定で、クライアントの文字サイズ設計は妥協できない要素です。
Krea 2のcompute unit費用をMidjourneyと比較
テストバッチと再生成をすべて含む、実制作の数字です。納品した40カットに、最終選定までのテスト生成と再生成がおよそ90カット。それでも、その月のProプランに含まれる20,000 compute unitsの範囲内に収まりました。月額$35を基準にすると、採用1カットあたりの費用は数ドルです。上限に達するまでは、枠内の再生成にかかる限界費用も実質ゼロです。
同じ要件をMidjourneyで進めるなら、標準プランの料金に反復作業の時間が加わります。本当のコスト差は、この時間です。金額だけなら、一般に思われているほど大きな差はありません。しかし所要時間は違います。ブランド世界を固定した40カットの場合、私のMidjourney制作フローでは、一貫性を得るまでに2日間のプロンプト調整と再生成が必要です。Krea 2では、半日のムードボード作業と、プロンプトに抗う代わりにスタイル強度を見ながら進める反復作業で済みました。
判断が逆転する条件もあります。ブランドそのものが、暖かく映画的で少しノスタルジックというMidjourney特有の美意識を求めているなら、Midjourneyの勝ちです。最初から目的地へ向いているモデルと争う必要はありません。一方、明確なカラーストーリーがあり、それがMidjourneyの標準的な表現とは異なる保守的なクライアント案件では、Krea 2のスタイル転送が、これまで2日間の作業を要した差を埋めます。
見るべき指標は、レンダー1回あたりの費用ではなく、採用1カットあたりの費用です。Runwayエージェントによるブランド動画制作フローの計算でも結論は同じでした。効くのは定価ではなく、反復にかかるコストです。

うまくいかなかった点――人のアートディレクションが不可欠な工程
該当するのは3つです。ベンチマークからは分からないため、具体的に説明します。
タイポグラフィはモデルから完全に切り離しました。 すべての文字組み、ラベル、見出しを、完成画像に合わせてFigmaで設定しています。クライアント案件でブランドの文字サイズ設計は妥協できません。AIの文字生成は今も不安定で、任せると再生成のたびに余計な負担が発生します。
最終的なカラーグレーディングには、実制作向けの編集ソフトが必要でした。 Krea 2から出力した段階で完成度は90%。カラーストーリーも明度域も保たれ、アクセントも一貫して見えていました。それでも、シアンのアクセントをブランド指定の正確なhex値へ合わせ、セット全体のシャドウ濃度を統一する最後のグレーディングはDaVinciで行いました。カテゴリーごとに20分。必要な工程でした。
どれを再生成するかという判断こそ、人の仕事でした。 Krea 2 Largeの出力の26%がスタイル評価の下位2段階に入るというベンチマーク結果は、制作現場で言えば、およそ4回に1回の生成を捨てるということです。どれを捨てるべきか、モデル自身には分かりません。ブランドに合うカット、再生成する価値のある惜しいカット、完全な失敗を見分けるのは人です。この判断は、アートディレクターの仕事として今後も変わりません。必要な時間をあらかじめ見込むべきであり、モデルが判断できるとは考えないほうがよいでしょう。
現在のクリエイティブAIについて、率直に言える境界線はここです。圧縮されたのは制作工程であり、アートディレクションではありません。このキャンペーンではAIが制作を担いましたが、仕事の80%は依然としてアートディレクションでした。AIは要件定義そのものを代替するのか、それともレンダーを速めるだけなのか。クライアントからそう聞かれたとき、DVNC.studioでもおおむね同じ説明をしています。
Krea 2を導入すべきデザイナー、見送るべきデザイナー
導入する価値があるのは、 多数のカットでひとつのブランド世界を維持するクライアント案件があり、反復コストを抑えたい場合です。Krea 2は、この用途のためにつくられています。4枚のムードボード、スタイル強度のダイヤル、15秒の反復は、デモではなく実務で使える制作ツールです。
見送ってよいのは、 Midjourney特有の美意識を持つヒーロー画像が1枚だけ必要な場合、またはプロンプト型モデルが標準で返す一般的な高級感こそがブランド表現である場合です。すでに目的地へ向いているモデルと争う必要はありません。
デザインの観点からまとめると、制御手段としてのスタイル転送は、AI画像生成ツールがクライアント向けキャンペーンを完成できなかった構造的な理由、つまりブランド世界のずれをほぼ解消します。残る差は、文字、最終グレーディング、再生成の判断です。そこは今も人が担っており、その状態がおおむね妥当だと考えます。
この40カットで使ったムードボード、スタイル強度の設定、実際のプロンプトを、ダウンロードできるパックにまとめました。名称はAI Poster and Campaign Prompt Packです。宣伝用に整えた内容ではなく、実制作の設定をそのまま収録しています。無料で、このページにあるCTAはこれだけです。リンクはサイトのフッターにあります。
Krea 2は、1枚だけでなくキャンペーン全体でブランドの一貫性を保てますか?
今回の40カットでは、4枚のムードボードを使い、スタイル強度を中高域に設定することで、プロンプトで扱ったことのない被写体にもカラーストーリーを維持できました。セットの一貫性を左右するのはバッチのvariationです。広がりではなく一貫性を優先すれば、見栄えがよいだけのばらばらな画像ではなく、実際に使えるバッチになります。
スタイル再現性ならKrea 2とGPT Image 2のどちらが上ですか?
現在も#1はGPT Image 2です。Contra Labsによる4モデルのベンチマークで、Krea 2 LargeはStyle Fidelityが0.14ポイント差の#2となり、net-usefulの基準を上回った唯一の非GPTモデルでした。実務で見るべきなのは順位ではなく、自分の制作フローにおける採用1カットあたりの費用です。
Krea 2を使うには、どのKreaプランが必要ですか?
Krea 2を利用できるのはProからで、月額$35、20,000 compute unitsが含まれます。Maxは月額$70で60,000 compute unitsです。
Krea 2ではスタイル参照画像を何枚まで同時に使えますか?
ムードボードには最大4枚のスタイル参照画像を同時に設定できます。各画像が出力へ与える影響度は、強度コントロールで調整します。
このキャンペーンでは、Krea 2がデザイナーの代わりになりましたか?
いいえ。タイポグラフィと最終カラーグレーディングは人の手で行い、出力のおよそ4分の1については、モデルにできない再生成の判断が必要でした。置き換えたのは制作の反復作業であり、アートディレクションではありません。
2026年9月4日







